豆腐屋跡

紛れもなく豆腐屋跡だ。

町を歩いているととある家の窓に「豆腐」という文字が貼ってある。

ここは祖父母の代から豆腐を購入していた豆腐屋さんの跡である。

この豆腐屋さんは地元一帯で昔ながらの販売方法をとっており(乗り物は3輪の原動機付自転車に進化していたが)特に祖母が出歩かない人であったためにこの豆腐屋さんの豆腐のみを購入していた。
いわゆる「豆腐屋さんのラッパ」が鳴るとボウルを持って外に出て、親父さんを呼びとめたものだ。

また、豆腐自体も通常の値段で購入できる豆腐としては非常に高品質であったようだ。
地域の噂話ではあるが、仕入れる豆が国産で高価だったため、わざわざ税務署が確認しに来たとさえ言われていた。

そんな豆腐屋さんも、親父さんがあるとき突然亡くなってしまい、その技術を継承する方もいなかったために廃業となってしまった。返す返すも残念と言わざるを得ない。

その名残ともいえるこの「豆腐」というシール・・・見るとなんとなく「あの豆腐」をボウルを持って買いに出た自分を思い出してしかたがないのである。